明治四十年 四月二十五日
病院ニ於テ療養中ノ尾形百之助上等兵、遁走セリ。
三十年式歩兵銃ヲ携行ノ疑イ有。
発見セリハ二等看護婦ノ――
○ ○ ○
「尾形上等兵について聞かせてくれないか」
揺るぐ蝋燭の焔は、ただでさえ奇矯な鶴見中尉の姿をいや増して不気味に照らしている。看護婦は壁に映る影が異類異形のものではないかと目を凝らしたほどだった。
彼女が兵舎に呼びつけられたとき、すでに夜の帳は降りきっていた。婦女が出歩くには遅すぎる時刻だ。病院まで迎えに行ったのは月島軍曹だった。
尾形上等兵の件で詳しい話を聞きたいと言っていたが、まさかこれほど急を要するとは思わず、彼女はいくらか面食らった。
部屋には中尉と軍曹、それから看護婦のみであった。窓もドアも隙間なく閉められている。彼女は息苦しさを覚え、服の胸元を握りしめた。机に椅子が二つ。中尉はそこに軍曹と看護婦を座らせると、自らは立ったまま、時折なにかを思い出したように、わけもなく部屋を歩きまわる。
「体はほとんど快復していました。来週には退院していいとの指示が――」
「そうではなく」
中尉は手のひらで看護婦の言葉を遮ると、すべてを見透かしたように目を細めて、
「患者としてではなく、一個人の君の目から見た尾形百之助について聞かせてくれ」
答えに窮した看護婦は、隣で書記を務めている軍曹に視線を流したが、彼は底冷えした瞳で彼女を見返すのみだ。
「細大漏らさず」
中尉の鋭い眼差しに射抜かれて怯まぬ者はいない。まして彼女は軍人ですらなく、一介の看護婦である。
「……わかりました」
やがて、彼女は口を開いた。緊張した面持ちに反して、話しぶりは滔々とし、雄弁であった。
○ ○ ○
すべてお話しいたします。
と言いましても、彼とわたしはあくまで患者と看護婦。その関係を逸することなき間柄でございます。尾形上等兵の行方の手がかりなど、わたしは持ち合わせてはおりませんことを先にお断りさせていただきます。
初めて彼の姿を目にしたのは旅順の野戦病院でした。
鶴見中尉、あなたを見舞いにいらした軍人さんのなかに彼もいたのです。
覚えていらっしゃいますでしょうか。きっと難しいですね。あの頃鶴見中尉は重篤な状態を脱したばかりで、一見すると会話は出来ていても、混濁とした脳は現実と夢の境界線を曖昧にしますから。頭部をあれほど損傷したのです、無理もございません。
月島軍曹も下腹部の裂創で臥せっていらっしゃいましたね。その後お加減はいかがですか。あぁ、それはよかった。
――失礼いたしました。本題から逸れましたね。尾形上等兵の話に戻ります。
あの日、彼はわたしを視線で呼ぶと、小声で、
「鶴見中尉は快復するのか」
などと聞きました。
鶴見中尉には申し上げにくいのですが、わたしはそのとき、
「わかりません」
と申し上げた覚えがあります。
当時は本当にどうなるかわからない状態でした。どうか気を悪くなさらないで。
聯隊の皆様のなかで、彼が一番落ち着いていらっしゃるように見受けられました。ほかの方々は鶴見中尉を案じるあまり狼狽気味でした。尾形上等兵は、そういう質なのでしょうか。彼はご自身が大怪我を負った際も取り乱しませんでした。
手術後の晩などはひどく痛んだでしょうに、莫児比涅(モルヒネ)をねだることもなかったのです。優秀な兵士なのだろうと思いました。事実そうだったのですか。
二度目にお見かけしたのは戦後、旭川の病院でした。
訓練中に負傷した一等卒の見舞いにいらっしゃいました。彼はわたしを覚えている様子でした。
以降は町中でもお会いすることが増えました。
大通り、茶屋、食堂、芝居小屋……。
とくになにをするわけでもなく、目が合えば会釈して、わたしのほうですと、場面によりましては軽くほほ笑みを返すのみでありました。
わたしども看護婦はそういった品行についての規律は格別に厳しいのです。患者以外の男性と親しげにしているのを見られて、妙な噂でも立てば、わたしは居心地が悪いなどという程度にはおさまりません。むやみに近づくことは避けたいのです。
しかしこのようなことがございました。
それは昨年の初秋、夕暮れどきです。
郵便局に向かう途中で、にわか雨が降り始めました。傘はなく、患者から預かった大切な手紙を持っておりましたので、とにかく濡らしてはいけないと、目についた建物の軒下に逃げこみました。二丁目の角にある呉服屋です。
そこに先客としていらっしゃったのが尾形上等兵でした。
彼もまた、雨に打たれ寒そうでした。それでも背筋はぴんと伸び、軍人さんの威厳が感じられます。
つかの間でしたがわたしたちはぽつりぽつりと話をしました。
なんということはございません。たわいない世間話です。互いに視線は正面に向けたまま、三尺ばかり距離をあけ、立っておりました。傍から見れば偶然居合わせただけの他人だったでしょう。それに、偶然居合わせたのは事実でしたし。
「いつから旭川にいたんだ」
「日露戦争が終わって間もなくです」
「ならば俺とほぼ一緒か」
ひっそりとしたひとときでした。
しばしばわたしたちは雨音に耳を澄ませ、その侘しげな音色に聴きいりました。
今になって思い起こせば、彼との沈黙はけして気まずいだけではなかったように思われます。これをなんと言いましょうか。言葉にするのは難しいです。
彼の生得らしき密やかな気配と、廓寥とした雨降りの町――それらがあいまって、奇妙な心地よさを感じていた覚えがあります。
尾形上等兵は、雨も止みきらぬうちに去っていきました。会話のつまらなさに辟易したのかもしれませんね。わたしはその軍服の背中を、縫い目が見えるほど見つめておりましたが、彼が振り返ることはありませんでした。
尾形上等兵は雨の似合う人でした。
真夏に降るぬるりとしたそれではございません。頬の表面をかすめ、すっと落ちていく冷ややかな秋雨です。水たまりに落ちた雨粒が、波紋と共に消えてしまうように、彼はいつもわたしの心に小さな波紋を残して去っていくのでした。
病院の外で彼と話をしたのは、その、雨宿りの夕暮れだけです。
そしてお二人もご存知の通り、今年の二月。
尾形上等兵と関わりがあった、と言えるのはこの頃ですね。わたしは彼の担当看護婦になりました。二ヶ月ほどは毎日顔をあわせておりましたし、当初はかかりきりでした。
尾形上等兵が運びこまれてきた夜を、今もはっきりと記憶しております。その晩もわたしは夜勤でした。
右腕と顎を砕かれたばかりか、低体温に陥り、きわめて危険な状態でした。手術はわたしも介助いたしました。
幸い大きな後遺症も残りませんでしたが、完全にもとの体に戻ったわけではございません。くれぐれも、無理は禁物、とあれほど言いましたのに。
――えぇ、そうです。
はたしてあの肩でまともに撃てるのか……。
今朝からずっと、そんなことばかり案じておりました。
尾形上等兵は兵士として大変優秀だったようですが、人望があるわけではなさそうですね。顔見知りらしき兵士の方々が、廊下で彼を「山猫」などと揶揄しているのを何度か耳にしました。
彼は無愛想で皮肉屋なところもありましたから、人好きのする性格ではないことは承知しております。
けれどわたしは、尾形上等兵が嫌いではありませんでした。
患者としても人としても。彼はじつに手のかからない患者でしたから、ほかの看護婦も彼を好ましく思っていたようです。
尾形上等兵は必要以上に、いえ、必要なときですら看護婦を呼びませんでした。顎の怪我のせいで口がきけない彼には呼び鈴が与えられていましたが、それが鳴ることは一度としてなかったのです。人によっては痛みのたびにわたしどもを呼びつけて泣き言を並べますが、そのようなことを彼はけしてなさいませんでした。
術後数日は、真夜中に目覚めてひどく苦しんでいる様子でしたので、莫児比涅(モルヒネ)を与えようとしましたが、彼はわたしの手を掴み、視線で「いらない」と拒否しました。過剰な莫児比涅(モルヒネ)が心身に及ぼす悪影響をわかっているようでした。
そのため、夜はひたすらに耐えるしかありません。
わたしは彼につききりで額の汗を拭いたり、幼い頃母に語ってもらった物語を聞かせ、子守唄も歌いました。彼はときどき瞼を上げ、黒目をこちらによこしたのち、ふたたび目をつむり、苦しそうな呼吸を続けるのでした。
その頃、意思の疎通は左手を使って行われました。わたしの手のひらに、彼が指先で文字をしるすのです。そのくすぐったいこと。
いつだったかの晩に、
「わたしの声は邪魔でしょうか」
と聞いたことがあります。彼は人差し指をわずかに振り、
「いいえ」
の合図を出しました。
なにをしても彼は礼など言いませんが、わたしは指の一振りだけで満足でした。
わたしにとって尾形上等兵は、山猫などではなく、警戒心が強くなかなか懐かない野良猫だったように思われます。
打ちとけていくうちに……いえ、明確な言動があったわけではありません。足の真横を通り抜ける際に、尻尾をするりと絡ませるような、そんな彼の気まぐれを、わたしが一方的に親しみの印だと解釈しただけかもしれませんね。きっとそうなのでしょう。
包帯が取れ、会話が出来るまで快復してからは、こんなことがありました。
「髪を変えたのか」
彼はわたしのほうをちらとも見ずに言いました。ベッドに腰かけ、枕元に置かれた花瓶を眺めている様子です。
驚きました。たしかにその日は普段と結い方が違いましたが、彼がそのようなことに気づくのみならず、言葉にするなんて。眉をすべて剃ったとしても彼は微動だにしないだろうとさえ思っておりましたので、心底驚いたものです。
「おかしいですか」
「いや」
彼の左手の人差し指がぴくりと反応し、「いいえ」の合図を出したのを、わたしは見逃しませんでした。しばらくは指の合図がぬけきらなかったようです。
「尾形上等兵の髪もお切りいたしますか。……だいぶ伸びましたね」
無意識のうちに、わたしは彼の髪にふれておりました。
尾形上等兵は、他人からむやみに接触されることに抵抗があるようでしたが、そのときはわたしのされるがままに髪を撫でられていました。
「あんたに任せるのはごめんだね」
「そうおっしゃらずに。弟たちの髪はわたしが切っていたんですよ」
「どうせ丸坊主だろう」
「あら、どうしてわかったんですか」
とうとう彼は髪を切らせてくれませんでした。
月島軍曹はご存知でしょうが、今の尾形上等兵の頭髪といったら。
あれは夏場に伸びきりになった病院の裏庭の雑草でございました。理容師を呼ぼうかと提案しましたが、彼は頑なに首を振るのです。なにかこだわりがあるのでしょうか。
失礼いたしました、またしても無駄話を――あぁ、こんなことが本当に、彼の行方に繋がるのでしょうか。
申し訳ございません、ですが、わたしと尾形上等兵の関わりは、この程度のとりとめのないものでした。
そういえば、一つだけ手がかりらしき記憶がございました。先週のことです。
彼は病室で銃の手入れをしていました。暴発や誤射すると危険ですからおやめください、とわたしが強く言いますと、彼はため息混じりに片づけに取りかかりました。
なるほど、尾形上等兵は射撃に堪能だったのですね。その銃ですか? たしか兵舎のほうに――いえ、病院で保管していたのか――、すみません、わたしのほうでお預かりしなかったもので。詳しくは婦長にお尋ねください。
とにかく、彼は銃をさわりながら、問わず語りに話し始めました。
田舎にお祖母さまを一人残してきたそうです。
故郷に帰りたい、などという直接的な言葉は出ませんでしたが、大変気がかりな様子でした。久しぶりにあんこう鍋が食べたいとも呟いていました。
「あんこうですと寒さのあるうちに帰らないといけませんね」
わたしはそのように返答した覚えがあります。
このやりとりでしたら、手がかりになりますでしょうか?
尾形上等兵が失踪した夜についての記憶ですか。
そうですね、いつも通りの、月のきれいな夜でした。消灯後は定期的に各病室を見まわりましたが、尾形上等兵も含めてとても静かでした。病状が安定した患者ばかりでしたので。見まわりでは顔までは見ません。入り口より寝姿を目視するのみです。
尾形上等兵はわたしが見まわりに来る間隔を知っていたのでしょう。機を窺い、寝間着を布団のなかに詰める工作を施し、窓から出て行ったのだろうと思われます。目的はわかりません。彼はよほど故郷のあんこう鍋が恋しかったのでしょうか。……。
○ ○ ○
「……彼はただの患者で、わたしはただの看護婦でした」
そこまで言うと、看護婦は口を閉ざした。もう自分に語ることはないのだという満ち足りた面持ちで。
中尉はさりげなく、しかしぬかりはない眼差しで彼女の一挙手一投足を注視していたが、ややあって背中を向け、窓の外に視線を移した。
「いや、じつに参考になった。やつは茨城に向かったようだな」
「お力になれたのなら嬉しいです」
「夜分遅くに呼びつけてすまない。月島、彼女を送ってやれ」
「はい」
「またなにかございましたら、いつでもお呼びくださいね。尾形上等兵が心配だわ」
「えぇ。見つかり次第ご連絡しますよ」
軍曹は彼女を送ったのち、ふたたび中尉のいる部屋に戻った。
中尉は部屋を出たときと変わらず、窓の外に目を向けたままである。
「月島。彼女をどう思う?」
「嘘を言っているようには見えませんでした。ですが……」
嘘を言っているようには見えない。しかし、腑に落ちないところがあったのもたしかだった。
軍曹は慎重に言葉を選びながら、話を続けた。
「ですが、彼女はなぜ、尾形上等兵が銃を持って出たことを知っていたのでしょうか」
兵舎から消えた二挺の三十年式歩兵銃は、共に行方知れずになっていた二階堂浩平一等卒が持ち出して、その一つを尾形上等兵に渡したのだろう、と推測されていた。その事実は一部の者にしか知られていないはずであった。
『完全にもとの体に戻ったわけではございません。くれぐれも、無理は禁物、とあれほど言いましたのに』
『そうだな。銃を持って行っても使いこなせるかどうか――』
『えぇ、そうです。はたしてあの肩でまともに撃てるのか……。今朝からずっと、そんなことばかり案じておりました』
軍曹は、中尉と看護婦のやりとりを思い返していた。
中尉の誘導尋問と言われてしまえばそうかもしれない。だがあの様子を見るに、まるで尾形上等兵が銃を持って出たことを知っていたような、あまつさえ、実際にその姿を目撃したかのような印象を受ける。
「病院ではあらゆる情報が出まわるからな……彼女も偶然耳にしたという可能性はある」
「それもそうですね」
「今たしかなことは――」
中尉は部屋を出る間際に蝋燭の火を吹き消し、断言した。
「尾形上等兵は故郷には帰っていない」
部屋に残ったのは暗闇のみであった。
○ ○ ○
月の美しい静かな夜だった。
消灯後の廊下は、窓から月光が差しこんでほのかに明るい。
コツコツ、と看護婦の靴音だけがこだましている。巡回の時間にはまだ早かったが、薬品庫から医療品を運ぶついでに病室を覗いてまわった。このような穏やかな夜は久々で、毎晩こうであればいいのにと彼女は思う。どのベッドもゆるやかに上下している。
残すは最後の一室となった。角部屋の個室だ。
この病室の患者は退院が決まっている。深刻な後遺症もなしに快復したことは喜ばしいが、甲斐甲斐しく世話した子猫が離れていくようで、わずかに寂しい。彼女は患者に対して特別な感情を抱く自分がおかしくて、そして恐ろしかった。
看護婦が異変に気づいたのは、病室に入る直前だった。
窓を開ける音がして、彼女は病室を覗きこむ。
風に揺れるカーテンと、そのかたわらの人影。肩に小銃。
男は窓枠に足をかけて、今にも飛び出さんと前傾している。
「どこに行くのです」
看護婦の声に一旦動きを止めるも、男はそのまま屋外へと降りていった。
彼女は窓辺へ駆けよって、
「尾形上等兵!」
と叫ぶ。
彼女がこれほど声を張りあげたのは久しぶりだった。
窓の外には陰気な裏庭が広がっていて、その先は暗く険しい山がそびえている。
病棟から見えるこの山を、彼女は常々恐怖していた。真夜中にふと見ると、草陰に得体の知れない獣の光る目が潜んでいたりする。そのたび彼女は小さく悲鳴をあげ、肝を潰すのだった。
「……あまり騒ぐな。気づかれたくない」
「こんな時間に、どこへ行くのですか」
「あんたには関係ない」
「関係ないことがありますか。今すぐ病室に戻ってください」
「――尾形上等兵、まずいですよ」
尾形上等兵の先で、同じく小銃を肩にかけた二階堂一等卒がうろたえていた。
「看護婦に見られたらすぐに追手が来るんじゃないですか。……あの女、どうします?」
ひそめられたこの声は彼女の耳に届いていなかった。二階堂一等卒は懐を手探りし小刀を掴んだ。
「大丈夫だ。先に行け」
二階堂一等卒が歩き始めたのを見届けた尾形上等兵は、看護婦の顔が見える距離まで引き返し、さきほどより幾分やさしい声音で語りかけた。
「俺がどこへ向かうかは、聞かないほうがいい。関わるとあんたもとばっちりを食うぞ」
「……夜な夜な逃げ出すほどの事情があるのですか」
「そういうことだ」
尾形上等兵は、いかにも煩わしいという仕草で髪を撫でつけた。
看護婦はしばし黙りこむと、両手に抱えていた医療品のなかから包帯や薬など簡易的なものを見繕って、手近の花瓶敷きでそれらを包んだ。
「きっとなにかの役に立つはずです」
尾形上等兵は驚きながらもそれを受けとると、鋭い眼差しで彼女を見据え、礼の代わりに厳しい口調で告げるのだった。
「……いいか。明日にでも軍の連中が来て、あんたを尋問するだろう。なにを聞かれても、知らない、なにも見ていないと言え。俺が消えたことは朝日が出るまで気づかなかったふりをしていろ。ただし鶴見中尉には嘘をつくな。必ず見破られる」
「どうして……」
「あんたがまずいことにならないよう立ちまわれってこった」
そう言うと、尾形上等兵は踵を返し、草木の茂り始めた裏庭を駆け抜けていった。向かった先は彼女が恐れている山の暗がり。
看護婦はもう一度、
「気をつけて」
と呼びかけたが、尾形上等兵が振り返ることはなかった。
背を向けたまま人差し指を天に突き上げ、ほんの少し関節を動かしただけである。
二人の姿が月明かりも届かない暗闇に消えてしまうまで、彼女は瞬きも忘れてじっと見つめていた。
ほぅほぅ、というフクロウの侘びしい鳴き声を聞きながら、どうか彼らの行く道を照らしてはくれまいかと、月に祈るばかりであった。
(2022/02/13サイトに更新)
(2018年11月24日発行 夢小説本「雪月風花」に収録した短編)
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