「サッカー選手との合コンじゃなかったの?」


 金曜の夜、百貨店のパウダールームは隅々まで混沌の香りで満ちていた。

 横にいる女性は仕事帰りと見られる。オフィスカジュアルの権化のような白のテーラードジャケットには染みひとつない。表情に鋭さがあり、頬に殺伐とした色が伺えた。これから接待でもあるのかもしれない。
 いっぽう、そのまた隣の女性は、服装と様子から察するにおそらくデートだ。これが漫画だったら背景にマーガレットの花のスクリーントーンが貼られていただろう。


 どの女性も多かれ少なかれ物語がありそうで、それについて気ままに思いを巡らせるのは楽しかった。宝塚歌劇団の舞台裏を眺めているのに近い。
 ただしここでは誰もがヒロインなので、ステージメイクは念入りに行われる。わたしのように、他人の人生を妄想している能天気な役者はいない。光の加減で変わるアイシャドウのきらめきを確認したり、頭のなかで台詞を暗唱しているのだろう。


「来られなくなったみたい」

「じゃあ相手誰?」

「国母くんの高校時代のサッカー部仲間」


 国母くん、国母くん……。軟弱な記憶の畑を掘り起こし、到底食べられそうにない干からびた記憶を発掘する。たしかあれは大学入学して間もない……新入生歓迎会の……とにかく、さほど親しくはないが彼は目立つタイプだから名前と顔くらいは皆知っている。同じキャンパスでも学部が違えば関わりはそんなものだ。


「えーなにそれぇ。っていうか国母くん彼女持ちじゃなかった?」


 二人の会話に相槌を打つのみで、へたな横槍を入れず見守ることにした。彼女らにまかせておけばだいたいの問題は解決する気がした。なにしろ「合コンの達人」とリズムゲームのごとき異名を轟かせている二人だ。


「知ってるって。けど、そこから繋がりができるかもだし」

「ちゃんと三人いるんだよね?」

「人数は大丈夫って聞いたけど」


 "繋がりができるかもだし" 一理ある。人の縁とは不思議なものだから、思わぬところで予想外の人と巡り会えたりするのだ。

 まるで演歌の歌詞のようなことを頭で呟きながら、仕上げに買ったばかりのリップグロスを塗った。


「うわ。このグロス、なんか変な色じゃない?」

「そう?」

「べつにいいじゃん」


 二人はちらりともこちらを見ずに言ってのけた。鏡の中の、長いまつ毛を注視したままで。








「国母くーん、遅れてごめんね〜」


 国母くんが予約してくれたお店は、百貨店からそう遠くないビルのなかにあった。個室だけれどいかがわしさはなく、おしゃれな程度に間接照明がきいていて、落ち着いた雰囲気が漂っている。


「いいよいいよ〜! 適当に注文しといたから」


 国母くんとそのお友達は満面の笑みを浮かべ出迎えてくれた。

 サッカー選手の代打で呼ばれたというお友達は、前髪がアシンメトリーになっていて清潔感のある男の子と、もう一人は肩まである長髪が印象的な、一見すると軟派な感じのひとだった。

 いかにも活発な大学生といった風貌なのに、表情はどこかぎこちない。コートを脱ぎ、彼の正面の椅子に腰掛けると、親身そうに「寒かったでしょ」と声をかけてくれた。しかしその声も心なしか上ずっている。


「ほんと、寒くて。風邪ひいちゃいそう」

なまえちゃん、寒いの苦手?」

「……あれ、わたし、名前言ったっけ」

「!! いや、あの、さっき国母に誰が来るかとか話し聞いててさ……なんとなくきみがなまえちゃんなのかなって。ほら、名前と見た目がマッチしてるっていうか……うわなんか俺きもいこと言ってんな……」

「速瀬〜飛ばし過ぎだぞ〜〜」

「るせっ!!」


 乾杯もまだなのに、前のめりで話しかけてくる彼はちょっぴり挙動不審だけれど謎の安心感があった。なんていうか、初めて会う人じゃないみたい。
 きっと最寄り駅が一緒とか、同じ講義の受講者で似た人がいるんだろう。こんなとき、運命の出会いだとか前世の繋がりだとかおとぎ話を唱えられるほど透き通った瞳は持っていない。わたしはどちらかというとリアリストなのだ。


「こいつ、速瀬っていうんだけど。なまえちゃん、わかる?」

「え?」

「っ……〜〜オイッ! 約束と違げえだろーが!」

「もう言っちまえよ、ここまできたらさ。まぁ本人わかってねえみたいだけど」

「……あの、えーと……………ごめんね、人の顔覚えるの苦手で。服装とか、会う場所が違うだけでわからなくなっちゃう」

「あぁ、店では髪結んでっから。……ほら、こんな感じに。腰に緑のエプロンもつけてる」

「…………!!! カフェの!!!!!!」

「そう!!!!!!!」


 まるでポップコーンがはじけたような笑顔だった。つられてわたしも笑ってしまう。


 彼は行きつけのカフェの店員さんだ。友達のバイト先の近くの店だから、よく待ち時間に利用している。ほとんど常連と呼べる頻度で、たまに世間話もする。なのに、今の今まで気がつかないなんて。我ながら自分の察しの悪さには驚かされる。


「速瀬がバイト先にえらく可愛い女の子がくるってうるせーから、つてを辿って探してみたんだよ。けっこう苦労したぜ。まさかなまえちゃんだとは思わなかったな〜。おかげですぐにセッティングできたけど」


 国母くんはおちゃらけながら、幹事というお役目がいかに大変か語った。ときどき、速瀬くんから脇腹に軽いパンチをくらいつつ。
 いくつになっても男の子は親しい間柄の友達と子犬の兄弟みたいにじゃれ合うのが好きらしい。


「今さらだけど紹介しとくか。こいつが佐藤で」

「ども」

「同じ元サッカー部で、俺らのひとつ下。水樹のかわりに急遽呼んだ」

「ほんと、急すぎっす」


 佐藤くんは口数少なくも先輩二人を立てて、自分は縁の下の力持ちに徹しているようだった。
 主張の強いアグレッシブなタイプより、彼のように一歩引いたところから周囲を見渡す余裕がある男の子のほうが人気だったりする。現に隣の友人は彼に興味を持ったようで、声の調子がほかの二人を相手にするときとは違った。


「こいつ昔鹿島の平とマッチアップしてそよ風って言われたんだぜ」

「その話何度目っすか」

「ギャハハ」


 注文した飲み物と同時に運ばれてきたお料理は、どれもわたしの好物ばかりで、とびきりに美味しかった。
 お店が当たりだというだけでこの合コンは成功したも同然だ。つまらなければひたすらに食べ飲みしていればいいんだから。

 心配は杞憂に終わった。速瀬くんはあがりながらも楽しませようと真剣だった。上唇にビールの泡をのせて、たわいないおしゃべりで笑わせてくれた。


「速瀬くんってあの大学だったんだ。バイト先、ちょっと遠くない?」

「まぁな。けど交通費でるし。近くにフットサルコートがあるから、それ目当て」

「もしかして本屋さんの裏にあるところ?」

「そこ。あの本屋俺もよく行くよ。なまえちゃんもたまに見かけたぜ」

「え〜声かけてよぉ」


 休みの日なにしてるの。インドア派、アウトドア派。好きなアーティストは。スポーツは。……。速瀬くんとは人間的な性質が異なるようだったけれど、趣味嗜好の違う相手とのやりとりは新鮮で飽きがこなかった。

 なんてことない世間話を繰り返した後、幾度かの逡巡ののち、彼は固唾を飲んでこう切り出した。


「LINE、教えてもらってもいいかな」








 メイク直しに化粧室へ立ち鏡に向き合うと、頬を赤らめ背景に賑やかな花を散らしたわたしがいた。楽しさが顔にあらわれている。口元の筋肉が笑顔のまま固まっている感覚だ。
 ほぼ初対面の人たちと気兼ねなくおしゃべりして、愛想笑いじゃなく腹の底から笑ったのは初めてかもしれない。


 やっぱりなんだかしっくりこない色のリップグロスを塗り直しながら、今夜速瀬くんに送るLINEの文章を考えた。
 足取りは軽く、お酒のせいか床から数センチ上をふわふわ浮いている心地だった。



 そんな状態のままテーブルへ戻ると、申し訳なさそうに眉をハの字に曲げた捨て犬みたいな速瀬くんが、ひとりぽつんと佇んでいた。

 やられた、と思ったときにはもう遅い。


「あの……」

「ごめん!!!!! あいつら変に気ぃつかったみたいで……」


 この展開は彼にとっても不本意だったみたいで、顔の前で手を合わせる速瀬くんは心底申し訳なさそうだった。
 テーブルの真ん中にはくたびれた千円札が重なっている。お会計はまだらしい。


 う〜ん。思わず首をかしげ唸ってしまう。もう少しここでお話すべきか。あるいは、国母くんたちはこの後"どこか"別の場所に行かせるつもりで、わたしたちを置き去りにしたんだろうか。だとしたら、それはちょっと困る。

 速瀬くんは嫌いじゃないし、それどころかここ数時間で好感度が急上昇しているけれど、数時間前フルネームを明かしあった人とどうこうなるつもりはない。あいにく下着も上下ばらばらだし。いや、そういう問題じゃなくて……。

 二人きりで飲むのもちょっぴり荷が重い。六人が二人になったら、どうしたって沈黙が生まれてしまう。だんまりを楽しむだけの親しさはまだない。

 そんなわたしの心を見透かしたのか、彼はお金をかきあつめ、無言で解散の準備を始めてしまったではないか。


「駅まで送るよ。それともタクシーのほうがいいかな」

「大丈夫。……あの、電車で帰ります」

「じゃあ駅まで。行こう」


 速瀬くんはてきぱきと執事みたいにコートを着せてくれる。マフラーを首にかけてくれて、苦しくない程度にくるりと一巻き。「よし」と完了を告げるひとりごとのあと、手際よく会計を済ませ、店を出るときも重いドアを開けて先に通してくれた。


 外に出ると、2月の手心ない風が吹いて火照った顔を冷ましていく。速瀬くんのさらさらの髪が流れてゆくのを斜め後ろから見つめる。


「悪りいな、今日。みんながっかりしただろ」

「なにが?」

「なにがって……なまえちゃんも水樹に会いたくて来たんじゃねえの?」

「ミズキ、って?」


 「水樹知らねえの?!」速瀬くんはひどく興奮した様子で、"カシマ"の"ミズキ"くんについて熱く語った。
 どうやらそのミズキ選手とやらは、なかなか有名なサッカー選手らしく、予定では彼も顔を出すはずだったという。
 彼を語るとき速瀬くんの口ぶりは力強くとても覇気があった。

 出場停止になった彼の代わりに出た試合のこと。サッカーを初めて2年足らずのうちにプロのスカウトがきたこと。入部当初は初心者だった彼が3年には部長を務めるまでに至ったこと。
 よどみなく溢れてくるかつての記憶を持て余しているかのようだ。天体好きの少年がアンドロメダ銀河について語るみたいな、まばゆい直向きさがそこにはあった。

 高校生の、サッカー少年だったころの速瀬くんも、こんなふうにキラキラの瞳をしていたんだろうか。今だって魅力的だけれど、物語の一番重要なシーンを見逃したようで残念だ。


「それで、俺言ったんだよ、米がなくなるからもう食うなって。なのにあいつら………………悪りい、こんなん聞かされてもどうしようもねえよな」

「ううん。すごく楽しい。高校生の速瀬くんとおしゃべりしてるみたいで」

「……言っとくけど俺、普段はもうちょいまともな男だからな? 姉二人いるから女の子と話すのも得意だし」

「それって関係ある〜?」


 並んで歩きながらだと、向かい合っているときよりも気軽におしゃべりできた。速瀬くんもさっきより幾分リラックスしているように見える。


「質問していいか」

「そんなことわざわざ聞くの速瀬くんだけだよ」

「……彼氏、いる?」

「いるなら合コンなんて来ないって」


 わたしが笑うと速瀬くんは安心したような、気が抜けたような、あまりかっこいいとは言い難いたどたどしい笑みを浮かべた。


「速瀬くんは?」


 今度はこっちから聞いてみると、彼は待ってましたとばかりに片眉を上げてみせた。


「今はいない」


 "今は"にアクセントを強く置いた言い方がおかしくて、思わず吹き出してしまった。そのあとはもう、何かの糸が切れたみたいにけらけら笑った。お腹を抱えて笑った。笑い声は夜の街にうまく溶け込んで喧騒の一部になる。


「笑うなよ、たのむから」

「ごめん」

「なぁ、また会ってもらえるか?」

「どうかな」

「うわ、難易度高そうだな。俄然燃えてきたわ」


 な〜〜〜にが「どうかな」だ!! 心のなかでは「もちろん、明日にでも会いたいよ!」とニコニコしているくせに、思わせぶりな態度をとってしまう自分が腹立たしかった。

 あからさまに好意を向けられた経験がないから、どう振舞っていいかわからない。つい言葉の裏側や、あるかどうかも不確かな隠された本心を探ってしまう。

 速瀬くんは調子のいい男を演じているけれど、横顔を盗み見るとそれは困ったふうな苦笑いに見えた。どうしよう、面倒な女だと思われたかも。事実今のわたしは相当に面倒な女だ。


「わかってるよ、なまえちゃんは可愛い。俺みたいなぽっと出のあやしい男はそう簡単に相手にはされない」


 帰宅したら着替えもメイク落としも後回しにして真っ先にスマホで検索したい。「男女 かけひき」「男の子 気持ち」「可愛い 意味」おおむねそのようなことを。

 それでも納得の行く答えにたどり着かなかったら友達にLINEしてみよう。金曜の夜だからみんな忙しいだろうか。


「そういうこと言うからあやしさ増すんだよ」

「まじか、黙るわ」

「ていうか、なんでわたしなの? 今日だって、ほかの二人のほうが可愛いじゃん」


 あの二人はキャンパス内じゃちょっとした有名人だ。ミスコンに推薦されたこともあるし、遠くにいてもその華やかさゆえ目に留まる。入学式のとき隣の席にならなかったら、友だちになるどころか会話するのも叶わなかったかも。


「あの子らもさ、綺麗だよ。ただ恋人や友達よりも自分のことが好きなタイプ」

「速瀬博士の分析結果?」

「まぁ聞きたまえ。なまえくん。君は先月、浮気された友達が悲しんでるとき、誰よりも激怒して、自分のことのように悲しんでたね」

「盗み聞きしてたんだ」

「俺にとっては不可抗力だろ。人のバイト先で君らが情報を垂れ流しているんだぜ」

「やなかんじ〜」

「コーヒーの味もわかる子だよな。俺がすすめたの注文してくれるし、美味しそうに味わって飲んでくれる」

「店員さんのおすすめは美味しいもん」

「混んでるときとか、こっちが切羽詰まってるときは用があっても落ち着くまで待っててくれるよな。まだ新人で慣れてねえころ、注文ミスしたのは俺なのに差額払おうとしたのには笑ったよ」

「そんなの普通だよ。誰でもしてるって」


 不思議だった。自分の知らないところで、思いもよらぬ人がわたしに理解を示し、好意を抱いてくれているなんて。まるで生き別れの父親と再会したみたいだ。


なまえちゃんは自分の魅力に気づいてねえのさ」


 いつのまにか博士口調をやめてしまった彼はやけに真剣な眼差しをしていた。
 あわてて目をそらし、"1000円で飲み放題"というチェーン店の看板を目で追う。足を一歩踏み出す前に心臓の鼓動が追い越していく。


「目元がくしゃっとする気取らない笑い方がいい。靴とか、傘とか、手帳とか、持ち物のセンスが好きだ。新しい髪型にするたび目を引きつけられたよ。話をするときの、間のとり方も。優しい相槌の打ち方も。そういうのが、可愛い」


 驚いた。だって、男の人は女性の持ち物をあまり注視しないものだとばかり思い込んでいたから。だいたい自分自身の私物に頓着しない人もいる。
 そのせいか、男性が異性を褒める常套句と言えば、顔や身体など本人の努力とはほぼ無関係の先天的資質に対するものがほとんどで、こんな細やかな部分にまで目を配る男の子は初めてだ。


「わたしもひとつ質問していい?」


 彼は身振りと表情で「どうぞ」と言った。思い切って、ずっと気にしていたことを聞いてみる。


「このグロス、どう思う?」


 そう言って唇を指差せば、速瀬くんは古いアニメみたいに肩を波立たせ、オーバーなためを作ってから叫んだ。


「可愛いよ!!!……いや、すっっっっっっっげえ可愛い」

「うわ〜速瀬くん大げさ〜」

「まじだって!! 普段のナチュラルな色も可愛いけど……ちょっと前に髪巻いてたときつけてた赤いのも雰囲気違ってよかったし」


 いつもの色と違うと気づいたうえでフォローしてくれているのがわかって嬉しかった。
 一分一秒ごとに心の距離が縮まっていく気がした。実際の距離も近い。時折彼の小指とわたしの小指がかすめるほどに。


「店員さんってお客さんをよーく見てるんだねぇ」

「……気持ちわりいな、俺。けどよ、誰でもってわけじゃねえぜ。なまえちゃんのことはいつも見てたけど」

「どうかなぁ。速瀬くん、それわたしの友達にも言ってそうだしぃ」

「言わねえよ!!! ……どうしたら信頼してもらえっかな。やっぱ出会いが合コンって印象悪い? 俺けっこう一途っつ〜か女の子に対して真面目なんだけど」


 知ってるよ。速瀬くんはいいひと。印象悪くなんてないよ。たとえ嘘でも信じるよ。
 チープな言葉を口にする代わりに瞳でうったえかけてみる。

 帰りたくない。もっと速瀬くんといっしょにいたい。今夜だけ、駅までの距離が大唐から天竺くらい離れてくれたらいいのに。

 どれほど緩慢な足運びをすれば終電を逃す時間になるだろうかと、駅までの距離と速さを計算していたせいか、極端に歩幅が狭くなってしまった。
 対して、速瀬くんの一歩は大きい。ただし速度は亀並みだ。わたしに合わせてくれているんだろうか。それとも。

 あぁ、この信号を渡りきり、角を曲がったら駅が見えてしまう。素直なきもちを伝えられない意気地のなさがもどかしかった。


「もう一ついいか?」

「なに?」

「質問」


 自分のつま先を見つめていたはずの速瀬くんの瞳は、ゆっくりと持ち上がりわたしをとらえた。

 雨でも降ったんだろうか。路面はわずかに濡れていて、街頭テレビに映し出される薄青を辺りに反射させている。きらきら光る広告や街灯が眩しい。いつもなら雑多に感じるだけの街並みがクリスマスのとくべつな飾りのようにきらめいて見える。


「髪の長い男はアリか……ナシか」


 もちろん気持ちは決まっていたが、すぐには答えなかった。
 彼がどうしようもない照れ笑いを浮かべ、黒目を泳がせる様子を、ずっとずっと永遠に眺めていたいと思った。




(2017.02/11 企画提出)


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